ハコイリムスメ。
へへへ、驚け、俺の成果だ。
あとで葵を褒めてやんないとな。

「葵ちゃん、このお兄ちゃん優しい?」
「うん、好きだよー」

かーっと、全身が熱くなるのを感じた。
やばい、恥ずい。

「そっかー、ちとせ、良かったわね」
「あ、ああ、ああ…うん」
「何動揺してんのよ」

するわボケ。

…って言ったら殴られそうなので、言わないでおいた。


「ねえ葵ちゃん、困ってることとかあったら、いつでもお姉ちゃんに相談してね?電話番号を教えてあげる」
「うん?」
「たとえば、お兄ちゃんが意地悪してきた時とか、」
「しねえもん」
「あと、そうねえ…お洋服とか、お化粧とか」
「おけしょう?」
「葵はまだ肌がきれいだから、いらな」

さっちゃんの目つきが凶悪になった。
だけど、葵の前で大きな声を出すつもりはないらしくて、すぐに穏やかな顔に戻った。

…表面上は。

「別に、さっちゃんもまだいらないと思いますよー、心の底から!」
「取ってつけたようなフォローありがとう」

にーっこり。

あのー、怖いんですけど…


「じゃあ、ちとせちょっと外に出てて」
「え、なんで」
「なんでも」

有無を言わせない感じの迫力があったので、素直に従うことにした。

「…葵、良い子にしててね」
「はーい」





廊下は静まり返っていて、部屋の外に出ても、さっちゃんの良く通る声は聞こえてきてしまう。

…不可抗力だもんな、怒られないよな。

何かに言い訳をして、ロビーには戻らず、そこにあったソファーに座った。





< 145 / 465 >

この作品をシェア

pagetop