ハコイリムスメ。
俺は俺で、周囲を見た。

淡いクリーム色を基調とした店内には、趣味良くたくさんの画材が並べられていた。
文具店とはいえ、高級チック。
側にあった、何に使うのか検討もつかない、やけに軽そうな道具を手にとる。
値札を見たら、7に、ゼロ3つ…
げ、7000円!?

怖くなって慌てて棚に戻した。

ひょ───!!!
マジでありえねぇ!!
怖ッ!!文房具怖ッ!!


そんな俺を気にも止めず、葵は色鉛筆を見ていた。
あれは、一本50円。
普通に買うより安い。

「ほあー…」

目をキラキラさせてその棚を見回す女の子を、本気で愛しく感じた。

「葵、何色のやつが欲しい?36?48?あ、72なんてのもある…オリジナルだってよ」
「キレイだね?」
「うん?何が?」
「色が、いっぱいあるから」
「そだな」

笑うと、ほんのり赤くなる頬。
サラサラ揺れる髪。
コロコロした笑い声。





天井を見た。
クーラーの吹き出し口はどこだ、と。


………だって急に暑くなったんだ。


………クーラー、壊れてんじゃねぇの?



「これが良いな」
「え?」

下を見ると、葵がニコニコ俺を見ていた。

「どれ?」
「この、『48色』って書いてあるやつ」
「72でも良いんだぜ?」
「ううん、これがいいの」
「…そ?」
「うん」

何でだろ?

疑問に首をかしげながらも、48色を手にとった。

「絵の具は?」
「今日はいいの」
「…そ」

まぁ、そう言うのなら別に強制はしないけどね。





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