ハコイリムスメ。

親友の作戦

「どうしよう!?」

頭の中が真っ白で、どうしたら良いのか分からない。
サトはこんなとき、めちゃくちゃ頼りになる。
俺なんかと違って、冷静に回りをみて、一番良い方法を見つけるんだ。

「俺、考えたんだけど。」
「うんうん!?」

待ってました!!

親友はためらいがちに言った。

「葵ちゃんを、一晩俺んちに泊まらせればどー?」
「マジで良いのか!?」
「…お前こそいいのか?」

こっちが訊いてるのに。
変なヤツ。

「何が?」
「………気付いてないなら、別に」
「んだよ言えよ!!気ぃ悪いじゃんかよ!!」


俺は噛み付いたけど、相手にされなかった。


「…渡里待ってるから、早く行けよ」
「あー、誤魔化したー!」

俺が頭を抱えて叫ぶと、サトがうるさい、気づかれる!とそれを制するように俺の頭をたたいた。




「ちとせくん?帰らないの?」

俺を見上げて問う葵の頭を撫でた。既に太陽は沈みかけている。
西の空に赤みを残して、それ以外は深い青。
美佐を待たせたままにしておくのは、あまりにも酷だ。

俺は葵に向き直って、言った。

「葵、今日はお泊まりしといで」
「お泊まり?」

初めて聞く単語に、少女は首を捻った。

「サトの家に遊びに行くの。わかるな?」
「サトくんの家?」
「うん。サトが…えっと…あー…」
「…映画見ようと思って」

言葉に詰まった俺の後を引き取って、サトがナチュラルに言う。

「映画?」
「そ」




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