ハコイリムスメ。
美佐はそう言いながら、エレベーターに向かう俺の後をパタパタ追いかけてきて、それから袋を持って無い方の手をとった。


「ちとせって指長いよねぇー。細いし」


静かな空間に響く、2人分の足音、美佐の声。

…葵が居るときも2人分のだけど。

違うのは、葵はこんなにカツカツ鳴るピンヒールを履かないってくらいだ。

「長くないし。単に美佐が短すぎんだよ」
「ひどっ!!そ、んなハズ無いもん!!」


高速エレベーターの表示階数が、2から1へ。

「来た。乗って乗って」
「あ、待って!!!」
「は?」

美佐は俺の手を放して、先に乗り込んだ。

「えー…、いらっしゃいませ!!ご利用階数をお申し付けください!!」

ガクッ…
なんつーか…またガキくさいことを…

エレベーターガール気取りの美佐。
俺は付き合って、

「最上階おねがいしますー」

と、棒読みで言った。

「かしこまりましたぁ!!」
「へいへい」


「35」の数字の白い光が、ポッと点灯した。




< 169 / 465 >

この作品をシェア

pagetop