ハコイリムスメ。
エレベーターの中で、美佐が今日あったことやら、明日の学校のことを楽しげに話していた。

俺は、時々適当な相槌をうって、だけど実際は全く関係のないことに思考回路を働かせていた。




葵のものが、リビングや俺の部屋に在ったらどうしよう？

洗面所に２本並んだ、歯ブラシは？

食器棚の２つ並んだ、マグカップは？




機械仕掛けのこの箱は俺たち２人を上へ上へと運んでいく。
いっそエレベーターが止まれば良いのにと真剣に思ったけれど、そんなはずもなく、あっという間に最上階へ着いてしまった。


チン!
軽い音と小さな衝撃。
ドアが横に静かに滑って開いた。

「高い───!!」

目の前に広がる夜景に、彼女は目を輝かせながら、手すりに駆け寄った。


ライトアップされた東京タワー。
眠らない街のネオンサイン。
道を行き交う車のライトに、信号の光、ビルの蛍光灯。


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