ハコイリムスメ。
サト、葵、サト、美佐、葵。

3人の顔が、頭の中でぐるぐるぐるぐる回り続ける。
メリーゴーラウンド。
楽しげな音楽なんか流れてない、子どもも笑って乗ってない。


怯えたように俺を見て、無理に笑顔を作って、美佐はカバンを手に取った。

「…送ってくれるの?」
「……うん、送る」

何とか冷静さを保とうと、美佐から見えない様に左手を強く握った。
爪が手の平に食い込む。
痛い。血が出てる、気がする。




「じゃ、行こっか」
「…ん…ごめん……」

俺の中に残っている、わずかな罪悪感が、美佐に謝れと告げる。
んなこと、言われなくても。

「えへへ、大丈夫だよー?ちとせ、いっつも怒らないじゃん?たまにキレなきゃ疲れちゃうよ」

美佐は自分が悪くもないのに、俺を気遣う。
俺が理不尽に当たっただけなのに。

良く出来た彼女。
出来そこないの彼氏。

…しかも、嘘つきな彼氏。



美佐のカバンを、代わりに持つ。
ありがと、と彼女は笑って、それから少しだけさみしそうに目を伏せた。






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