ハコイリムスメ。
そのとき、急に女の子が振り返った。
綺麗に整えられたツインテールが揺れる。
女の子は俺を真っ直ぐに見つめた。
俺が目線を逸らせないでいると、ふわあって笑う。
似てた。
俺の大切な子に、笑顔がそっくりだった。
どこか葵に似た女の子。
俺が冷え切った心のまま精一杯の笑顔を返すと、女の子は母親と父親の手を放して、俺に近寄ってきた。
女の子の両親はハッとして振り返り、
「りなちゃん」
と女の子を呼ぶ。
りなちゃんと呼ばれた女の子は、
「お兄ちゃん、泣かないで」
って俺に言う。
俺は驚いて、少しの間、口がきけなかった。
だって、涙なんか、出てなかったのに。