ハコイリムスメ。
俺だって、必死なんだ。

自分の周りのものを、守ることだけで精いっぱい。
ようやく溶けそうな氷の大地に立っている。
バランスが崩れただけで、きっと沈んじまう。


もし、サトが俺のことを裏切っていたとしたら。


考えたくない。
疑いたくもない。

なのに、俺はやっぱり最低で、

葵を拾ったあの日、人生最悪の夜だと思ったあの日が懐かしく思えるほど、今日こそ最低の夜で。

俺の周りのすべてが、急に空虚に思えて、身震いした。



たった2駅だけ電車に運ばれて、目的の場所についた。

降りようとする足が、信じられないくらい重い。
気持ち悪い。




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