ハコイリムスメ。
サトの家に行くのは、これが初めてじゃない。
っていうか、むしろその逆で、かなり通いつめてる、と言っても言い過ぎにならないだろう。
でも、この道をこんなに暗い気持ちで歩いたのは初めてだ。
大抵はサトが、時にはトオルも一緒に歩く、サトたちの家までの道。
じわりじわりとしみだしてくる汗。
じわりじわりと陰る心。
どうしよう、帰りたくなってきた…
…そうだよな。
何も問いたださなくったっていいじゃん。
何も聞かなかったことにすればいいじゃん。
今まで通り、一緒にバカ話してさ。
美佐がいて、サトがいて、葵がいて。
それで良いじゃんか。
ぐるぐる回り出す、脳内ルーレット。
バカ野郎、自分で決めたことじゃねえかよ、と、強引に手で押さえて止める。
俺は単純だから、どうせ顔に出ちまう。
俺にとっても、サトにとっても…そんなの、良くない。
表面上だけ笑って、表面上だけで接して。
俺はあいつが好きだもの。
あ、ゲイではなくて、人として好き。
だから、
だから、嫌なんだ。
はっきりさせなくちゃいけない。