ハコイリムスメ。
 
「わあ、ちとせくんだぁ!!なんでー?」

あ、う…

「葵…」
「うん!!」



何が「うん!!」なんだ葵。
それから、
どうしてそんなにまっすぐに俺を見るんだ葵。



ダメだって。
今の俺なんか見たら、葵が汚れちまうって。
今夜の俺は、谷神ちとせの人生史上、最低なんだから。

それでも、葵の顔を見て力が抜けてしまったのだろうか。
俺のドアノブにかけていた手は、がくん、と元の位置に戻った。




リビングからは、サトとトオルと、おばちゃんの声。

「兄貴ぃー」
「んだよー、コンビニ行くっつったろお前」
「玄関に、ちとせさんが来てる!」
「ちとせが?」
「えー、ちとせくん?やだわあ、リビングに連れてきてちょうだいよ」
「早く早く!」


早くなくていいッつの!
頼むから遅くしてくれ。


「ちとせくん、私おうち帰るの?」
「…ん…場合によっては…」
「場合?」


葵は何がおもしろいんだか、目を細めた。




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