ハコイリムスメ。
「暑ー…」

日陰とはいえ、空気自体が熱いんだから、どうしようもない。

関東独特の湿気を帯びた熱い風が屋上を駆け抜けていく。
向こうで弁当箱を包んでいたであろう鮮やかな水色のバンダナが舞っているのが見えた。
きゃー!とか、最悪!とか聞こえる。

階下では笑い声が。
校庭からも笑い声が。



さっきまではうるさいだけだと感じていた昼休み独特の喧噪が、このくらい距離を取っているとなんだかやけに心地良くて、俺は雲ひとつない青空の下のベンチに横になった。



あ、嘘ついちゃったみたいだ。

雲がゆっくり流れてくる。一つだけ、ぽつんと取り残された雲が。



鮮やかな青と、眩しい白の対比がとてもきれいで、だから涙が出たのはそのせいなんだ。
別に、さみしいとか、そんなわけじゃないんだ。

だって、じいちゃんが死んでから、きっとずっと一人だったんだから。

今までが、幸せすぎたんだから。




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