ハコイリムスメ。

望田っていうのは、いつも俺が髪を切ってもらってる人。有名私立大学に通う、そこらのアイドルなんかよりもよっぽどイケメンーなお兄さん。もちろん、頭もいい。




途中、今朝葵が言っていたアイスのことを思い出した。氷っぽいイチゴのアイス。
っていうか、シャーベット。

どこで買って帰ろう?スーパー?コンビニ?
あ、確か最近駅前に新しいアイス屋が出来たんだよな。
そうそう、今度美佐と行こうって約束してて…




そこまで思って、立ち止まった。


俺の後ろの人の流れがそのせいで止まって、すぐ後ろにいたらしいいかにも悪そうな風貌の奴が俺に舌打ちをした。
睨まれたから睨み返すと、彼は「谷神さん」と唇を動かして、すまなそうに頭を下げた。

「や、ごめんなさい」

悪いのは俺なのに、と思って謝ると、すでにそこにはいなかった。
こうやって俺は新しく誰かにまた、嫌な思いをさせる。


自分のことで精いっぱいで、美佐にほとんど構ってない。こんなのが彼氏じゃ、美佐がかわいそうだ。
美佐は俺の彼女、ちゃんとした、彼女のはずなのに。

昼休みは逃げて、今も一緒にいない。


「…はあ…」


不景気な溜息。
最近ため息ばっかりついている気がして、より一層惨めな気持ちになった。






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