ハコイリムスメ。
カフェかよ、ここ。



それが初めてここに来たときの俺の「Orange」に対する第一印象だった。
それくらいオシャレ。制服着てる俺なんか、浮きまくりだ。

はじめて来たのは去年の秋で、それから通うようになった。季節に合わせたディズプレイで、今は夏らしく海のようなイメージになっている。


レジの側に行き、そこにいた女の人に声をかけた。

「こんにちは、さっき予約入れた谷神です」
「谷神様、お待ちしていました!どうぞ、お荷物お預かりします」

電話と同じ声。
この人だったんだ、さっきの。

「あ、おねがいします」
「はい。ええと、じゃあ少々お待ち下さい…望田くーん」

彼女はそう言ってお店の奥に入って行き、それから数十秒後、持田を連れて出てきた。

「お待たせしました谷神様。じゃあ望田くん、後はよろしくね」
「はいー」

ゆるーく望田が笑うと彼女は顔を少し赤くした。
イケメン大学生の笑顔のパワーってすげえのな。

「久しぶりだねえ、谷神くん。あ、やっぱ髪伸びたねー」
「だから来たんだけど」

俺の言葉にそりゃそうだ、と望田は笑って頷いた。

「いつもの席でいいのかな」
「あ、うん。別にどこでも」


望田の後ろについて席に移動する途中、ほとんど全員の女性客の目が望田にくぎ付けになっていた。

わー、モテるなあ。
さぞかし素敵なキャンパスライフだろうな、俺だったら疲れてやってらんないと思うけど。

だって、四六時中誰かに見られてるとか嫌じゃんか。
芸能人になりたい奴の気がしれない。





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