ハコイリムスメ。
いつも通りの鏡の前のイスに座る。

鏡には、今現在冴えないよーな言い表しにくい微妙な顔してる俺と、その後ろに望田の長い足が映っている。

絡まってコケたりしないのかよ、ってくらい長いから、正直ちょっと癪に障る。



当の本人はまさか客にそんな風に思われてるだなんて思いもしないで、はいはいごめんねー、とゆるめに話しながら、望田が俺の首から下を覆う布を首に巻いた。

「苦しくないよね」
「大丈夫」

鏡の中に映ってる自分を見たら、情けない恰好で悲しくなった。


…髪なげえ。
………眠そう、不機嫌。


こんな顔で家帰ったら、葵が怖がりそう。






俺の襟足の毛をくるくると触る。

「…痛んでんね」
「あーおかげさまで」

おかげとか訳わかんないし。望田は心底気にいらなそうにつぶやいた。



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