ハコイリムスメ。
カラーリングが全部終わって、最初の席に戻ってきた。

わー生まれ変わった、髪色。
明る過ぎた?
…まあいいや。


「じゃ、ざっと切ってから乾かして、細かく切ってくから」

布をまた首に巻きながら望田がいう。

「ご自由にー」

俺は読みかけだった音楽情報誌に手を伸ばしながら言った。


鏡越しに望田がいろんな道具の載ったワゴンを押してきた。
自分の使いやすい位置へと微調節しながら、鏡の中の俺を見ている。

「…何」
「え?ああ、いやあちょっと見かけない間に、ずいぶんとまあおおざっぱになったね、と思って。前はさー、『ここ、あと1センチ切ってよ』だのなんだのってうるさかったのに」
「あー?いつの話だよ」

雑誌から目を離さずに返す。
シャキッ、とハサミの音。
まだ湿った髪が数本、読んでた行の上に落ちてきた。ウザい。

「ちょっと、谷神くん。顔上げて少しは」
「うん」

どうせまた髪が降り始めるから。読むのやめた。
大して興味もないし。






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