ハコイリムスメ。
ハサミが軽快に踊る。

リズミカルに切り落とされていく髪。
しょっちゅうハサミを持ちかえて、切り方も変わる。

すくように切っていたかと思えば、縦にハサミを入れる。
小刻みかと思ったら、そうでもない。

考えてみれば美容師って、ちゃんと試験があるんだもんな。
確か国家試験、だったよなあ。


人に何かをやってもらってる最中、自分自身は自由気ままにものを考えていられる。贅沢な時間の使い方だ。


「学校はどー?」
「別にふつー」
「夏休み誰かとどっか行くー?」
「まだ予定ねー」
「バイトとかしないの?」
「興味ねー」

脱力しながら適当に返事をしていたら、軽快に動いていた望田の手が止まった。

どうしたんだろう、と一瞬思った。
でも、すぐにまた適当な事を考え始める俺の脳。



耳に、

「…谷神くんと会話してるとね、一方通行の信号を送ってる、みたいな気持になるよ」

というさみしそうな声が届いた。





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