ハコイリムスメ。
ピクリ、と顔をひきつらせた『のぶくん』。
俺、今どんな顔してるんだろう。
顔に貼り付けた微笑みが歪んでいくのを感じた。

「ふ、ふざけんなよ!てめぇ、何様だ!」
「お前の方こそ何様だよ?粋がってんな、ばーか」
「バカってなんだと!ちくしょう、やんのかコラ!」

俺はそのセリフを聞いて、声をあげて笑ってしまった。
そのせいで側でトオルが身を退いたのがわかった。

「な、何がおかしいんだよ」
「コイツ頭おかしいよ!行このぶくん!」

頭?
別におかしかないね。俺は今までで一度もないくらい冷静で冷酷な気分だ。

「ナメられたまま帰れるかよ!」
「ちとせさん、もー止めましょうよ!」

トオルの提案にキレたのは、相手の方で。

「ざけんな、逃がすかよ!」



いざこざはますますヒートアップ。
いつの間にか俺たち4人を取り囲んで、野次馬が集まっていた。

「で?お前はどうしたいんだよ」
「タイマンだろ!決まってんじゃねえか!」
1人で熱くなるヤツは嫌いだ。

「いいけど──────」



恐々と横から俺を見ていたトオルの目が凍りついた。



「どうせ負けるよ、アンタ」



満面の笑顔で言い放つと、奴は肩を強張らせた。

あは、そんなに不気味?

でも、勝つよ。それは揺るぎない事実だ。
だって俺は、『谷神ちとせ』なんだから。



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