ハコイリムスメ。
「兄貴が、最近いつも帰り遅くて」
「………ふーん」

だから?
方眉をつり上げて見せると、トオルがポケットから財布を取り出して、一枚の紙を抜いた。

「…この間、辞書借りようと思って兄貴の部屋に行ったら、机の上にこんなもん見つけたんですよ」

差し出された小さな白い紙。嫌な予感がした。

そうっと右手を伸ばしてそれを受け取って、目を疑った。
知った名前が載っていたのだ、つまり名刺。





『カウンセラー 吉田皐月』







よしだ、さつき。
かうんせらー。




思考が一瞬停止して、次の瞬間からパニック。

なん、で…
なんでさっちゃんの名前が。






「兄貴、カウンセリングなんか受けてんですか?俺、気になって…ちとせさんなら、何か知ってるかと思って……」

トオルの不安げな声が、右から入るどころか、目の前に浮かぶ。
この先、頭の中に入ってくる気配はない。





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