ハコイリムスメ。
「だから何!」
『とにかく開けろっての!』

イライラしていたのはさっちゃんも同じ。



マイク越しに聞こえるかすかなセミの鳴き声が、それを一層際立たせていた。

「葵が怖がるだろー!少しは考えろって!んで連打なんかすんだよさっちゃんのアホ!」

入口のロックを解除して、すぐに受話器を置いた。

ああ、あと数十秒後にさっちゃんがここまでくる。
そうめんなんてくだらない理由で…

あの人、社会人何年目なんだよ。
んで高校生しかも男にそうめん茹でさせんだよ。

あー迷惑。

普段世話になっているのも棚に上げて、俺は思い切りため息をついた。

「わ、!」

後ろから急にしがみつかれて、ビックリ。

「ち、ちとせくん…こ、怖い」
「あー…大丈夫、さっちゃんだから」
「さっちゃん…?」

訳が分からないというように、葵が首をかしげた。




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