ハコイリムスメ。
立派なソファセットは黒の革張り。

洋佑おじいさんたちが生きていた時のまま、何も変わっていないようで、微妙に違う。

ブラウン管だったテレビは液晶に、花柄だったカーテンは寒色系のストライプに。

無邪気に笑ってたちとせはいなくて、

何かと勘繰るバカなやつになった。


「…『突然訪ねてすみません、あの、…谷神ちとせと、日向葵ちゃん、わかりますか』すごくすごく丁寧に言うもんだから、こっちの方が緊張したわ」

「で、無視して続けるわけかよ」

ちとせはぶつぶつと、「3、4日前…まだ、美佐にばれてない時か」とつぶやいていた。

峰島くんとケンカしたのは、多分昨日。

美佐ちゃんにばれたのも昨日、のはず。

彼の立てた作戦が、彼の思っていた通りに進んでいたのなら。


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