ハコイリムスメ。
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「え?今なんて?」

「……俺、あいつのことすげー大事だから、なんていうか…笑ってほしい。昔みたいに」

私は妙なことを言い始めた峰島くんを見た。

「笑ってるじゃない。あいつ、どうしようもなく些細なことでも笑う奴だと思わない?」

ちがうんですよ、と首を振る峰島くん。

「わかる。……見てれば、一緒に居れば、わかるんです」

「え?」

「ちとせは、ずっと……じいちゃん死んでからずっと、誰にも俺にも渡里にも、本当の顔を見せてくれない」

「本当の顔?」


書きものをしていた手を止めて、峰島くんに目を向けた。
勧めたソファに座らない彼は、かたくなに自分の足元を見ていた。

「うまく話せなくてすんません。でも、これ以上の言葉は見つからなくって」

「………」

「吉田さんも、気づいてんでしょう?本当は」





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