ハコイリムスメ。
美佐は相変わらず不機嫌で、「俺帰るけど、美佐はどうする?」と訊いた時、「華と帰るから!」とつっけんどんに言われた。

サトが声に出さずに俺を指さして笑うから、はあ、と小さくため息をついた。




下駄箱で靴に履き替えながら、俺はサトに訊いた。

「サト、今日用事ある?」

サトは考えるように一瞬視線を宙に浮かべ、それから首を振った。

「んー、特に。だから、お前んち行くつもりでいたけど」
「あ、マジで。今それ言おうと思ってたんだよなー、よかった」


明日から、一日中なにして過ごしたらいいんだか。
葵はどこかに出かけたがるかな?


「……おまえなあ。葵ちゃんがどうこうの前にな?」
「わーってるよ…」

わかっちゃいるよ。
ぐだぐだしてても仕方ないってのもわかってるよ。
俺の気持ちはもう葵に向いちゃってるわけで。


でもなあ。


切り出し方が分からないというか、なんというか。
いや、悠長なこと言ってる場合じゃないってのも重々承知の上でさ、うん。



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