ハコイリムスメ。
髪型が違うし、来てる服も普段目にしているイメージとまるで違うから、気のせいかとも思ったんだけど、そうじゃなかった。



「……花田レイコ?」

「えー、レイコちゃん?」


いつの間にやら花田レイコのファンになってしまっていた葵が、うそだーあ、とおかしそうに笑った。

まあ一日中家にいて、テレビ見てれば、花田レイコを見ない日はないわけで、それは自然なことなんだけど。




「嘘じゃねーよ…」




ほら、ダッシュでこっちにくる…


って、
ええ!?




「お願い、一緒に来て!」




思いきりボーイッシュな格好をした花田レイコに腕をつかまれて、どうこう言う前に俺はスーパーと反対方向に走るハメになった。
ついでに言えば、手を繋いでいた葵も。




「ちょ、なんなんだよ!ワケわかんね」
「お願いです、1時間、ううん、30分でいいから…付き合って!」
「はー!?」


以外に俊足なのか、人ごみを縫うようにぐいぐいと進んでいく。俺は大丈夫だけど、葵が大変だった。

「と、ま、れ!」


俺が強引に足を止めると、前を行っていた花田玲子もガクンと体を揺らして止まり、葵もはーはーと息を切らしながら止まった。


「あああ、あたし、なんてこと!ごめんなさいごめんなさい!」
「あーもー…」

なんなんだ。
何で俺の周りにはこう、妙な事ばっか起きるんだ。

厄年?違うよなあ。
っていうか、初詣何年くらい行ってないんだろう。


我に返った、という様子でペコペコ頭を下げる花田レイコ。
葵は、本物だぁぁ!と目をきらきらさせるし、通行人にはじろじろ見られまくるし。


「も、わかったから……」
「ちとせくん、おなかすいたー…」

葵の目線の先にはファミレスがあって、空はすっかり茜色。
今からスーパーに行って、帰って、作って…なんてしてたら、時間が遅くなりすぎる。

俺はため息をつくと、

「じゃあ今日は外食。ごめんなー手抜きで」

と葵に言った。



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