ハコイリムスメ。
俺が何も言えないでいるうちにも、花田レイコの話は続いた。

「3年前、私が中学に上がったっばっかりのころに友達と街を歩いてたら、今の事務所にスカウトされて。
それでお仕事とかいっぱいは行ってくるようになって。
……だから苦手とか言ってる場合じゃなくなっちゃったんだけど…今でも、こうやってオフの時に男の人とか男の子と一緒にいるのは、…1度もなかったの」


「お、俺は…怖くないって?」
「うん」
「…なんで?」
「そんなの、わかんないけど……」

花田レイコは葵に目を向けた。

「……この子も、昔何かあったんじゃないのかな」

「!!」

「あ、図星」

…なんで、わかるんだ。
そう訊こうとしたら、花田レイコがその問いを知ってるかのようにふわりと笑って言った。

「なんかね、感覚的に…わかるんだよね、そういうの。谷神くんの過去にも、何かあったんだろうなって、わかるよ」

「お前…エスパー?」

それとも俺の態度に出てるのだろうか。
普通に生活してきて、それで、指摘されたのなんて今が初めてだ。

「この子が、笑ってるから。すっごく優しく笑ってるから、だから…谷神くんは怖くないよ」


花田レイコの声が、俺の耳に届く。



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