ハコイリムスメ。
「ちとせくん、見て!」
「…お、全部食べ切れたのか?すごいなー」

もう何にも食べられないよーと葵が俺によりかかる。
その頭をなでてやると、くすぐったいなあ、と笑った。

「……いいよ、『友達』になっても」
「…え、本当に?」
「うん。花田さんの言う『友達』って一体何なのかよくわかんないけど。いいよ」



よくわかんないさ。
でも、それでも、俺が誰かにできることならやれる限りのことなら、やるよ。

綺麗事だってわかっちゃいるさ、俺はそんなにきれいな人間でもない。


でも、『綺麗事』は好きだ。


人間、綺麗事に縋って、心砕いて生きてるんだから。

それに、キレイだと信じているものに触れていれば、いつか自分もそうなれるんじゃないかって気がしてる。
ほら、この気持ちだってある種の綺麗事。



「それに、葵も、」
「ん?」
「なあ葵、レイコちゃんと友達になってくれるよなー?」
「うん!」

ほらな、と花田レイコに笑いかけてみた。
彼女はコクコクと、何度も何度も頷いた。


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