ハコイリムスメ。
暑くてどうしようもなかったので、腰にバスタオルを巻いただけの恰好でリビングに行った。
寝るときはあける窓の上のエアコンを、リモコンを使って作動させる。
すぐにひんやりとした風が機械から吹き出され始めた。
「はー……気持ちいー…」
本当なら窓を開けて、うちわでパタパタやりたかった。
でも、35階のこの部屋じゃ、その行為はあまりにも不自然だった。
「じーちゃんたちも田舎に縁側のある家立ててくれればよかったんだよなー……」
そうしたら、今こんなふうにわざとらしく冷やされた風を浴びる必要もなかっただろうに、さあ。
あ、でもそうすると葵にもサトにも会えなかったのかな。
しばらくフローリングにあぐらをかいて座っていたら、
「ちとせくんー」
と、すぐ後ろから俺を呼ぶ声がした。
「起きたのか?」
振り返りながら声の主に訊く。
葵はまだ少しだけ眠そうにしていたけれど、それでもうん、と頷いた。
「どうする?お風呂、入るか?シャワーでもいいの?」
「……シャワー、浴びてくるー…」
ふらふらと微妙におぼつかない足取りで、葵は洗面所に入って行った。
「転ぶなよー?」
不安を覚えて、その背中に声をかけた。