ハコイリムスメ。
こんな形で知られるなんて。
こんなに簡単に、壊れるなんて。
いや、それとも、壊れるほどのものなんかはじめからなかったのかもしれないけど。
「……あのさあ、美」
「もういい!」
俺がなんとか弁解しようと考えを巡らせながら口を開くのと、美佐が小さく叫ぶのとは同時だった。
「もう、……いいよ…美佐疲れた」
「美佐、ちゃんと聞けって」
「聞きたくない。今日は、デートなんだもん。私、は、」
美佐は泣きそうな顔で俺を見ていた。
今朝は暑くて、人もいっぱいいて、それなのに俺たちの間は異様なほど静かで、冷たい。
「……ちゃんと話そう、美佐」
「……話したら、ちとせは離れていっちゃうの?」
「違う、違わないけど、……うまく言えないけど」
「ねえ、どうして?何がいけなかったの?美佐は何を直したら、いいの?」
美佐はその場にしゃがみこむと、小さく嗚咽を漏らした。