ハコイリムスメ。
「こんなに、あっけないものなんだね」
泣きやんだ後、美佐はそうつぶやいた。
「本当に、俺、…なんて言ったらいいか」
「何も言わないで、つらくなるから」
美佐はさみしそうに目を伏せた。
ラブホテルの装飾品は、今、そこにあるというだけでひどく心を疲れさせる。
ピンクに赤に、白にレースにスパンコール。
統一性がまるでない。
「ねえ、ちとせは…少しでも私のこと好きだったの?」
「好きだったよ、ちゃんと」
「ちゃんとって、どういう風のことを言うの?ねえ、無理しなくてもいいよ」
美佐は無理に笑っているようだった。
でも、どうしようもない。
俺が何を言っても、美佐を笑顔に戻すことはできないんだとわかっていた。
「もともと、美佐が一方的に好きだったわけだし。ただ、あまりにもあっけないね…」
「一方的とか、それは違う、美佐」
俺だって、好きだったよ。
今だって、好きなんだ。
でも、それ以上に、葵が大事になっちゃったんだ。
なあ、どう言ったらわかるかな。
言葉を並べても全部ウソになってしまいそうで、それすらできやしない。
ごめん、こんな最低なやつで。
そこまで思ったら、視界がゆがんだ。
あわてて目をこすったけれど、なぜか次から次へと、溢れ出してくる。