ハコイリムスメ。
それから20分。
鍋の中には、軽く5人前はあるのでは、というくらいの量の雑炊が出来上がった。
「サト、できたー」
「うまそーなにおいー」
俺が土鍋ごとガラステーブルの方に持ってきて、それから鍋敷の上にそれを乗せた。
「葵ちゃんどうする?」
「…んー……起こす」
俺が適当な食器を出している間に、サトが「おーい葵ちゃんー、起きてー」と葵を揺り起こした。
「…サトくん?」
「あ、おはよう」
最初はぼんやりしていた葵が、いきなりハッとして、「ちとせくんは!?」と、鋭く叫んだ。
呼ばれた俺は、「はい?」と間抜け面をするしかなかった。
「…へ?」
サトもあっけにとられて、ぽかんと俺を見る。
「さ、サトくん、ちとせくんが家にいないの!」
いや、居ますけど。
「葵ちゃん、ちとせならそこに…」
サトが俺を指し示す。
「え?……あ!」
彼女はすぐにソファーから立ちあがると、俺に飛びついてきた。
バランスを崩しそうになるほど、勢いが良かった。
「え?あお、葵?」
「…ひっく、…………………うわあああーん!ばかー!」
俺はどうして葵が泣きだしたのかもよくわからずに、困惑するしかなかった。