ハコイリムスメ。


サトが11時過ぎに帰った後、葵は風呂に入った。
俺はその間に、どうしても気になっていたので花田レイコに電話をした。

もちろん、その前にテレビの生放送に花田レイコが出ていないかチェックをしてからだけど。
それでも、取材やら対策やらで電源を切っている可能性は高かった。


プルルルルー…

無機質なコール音が子鼓膜を揺らす。
電源は切られていなかった。

「………出ないかな」



少し待った後、『留守番電話サービスに接続します』と機械の声が言いかけたので電話を切ろうとしたら、『はい』と声が聞こえた。

「あ、…花田さん?ごめんこんな時間に、今──」

今、大丈夫?と訊こうとしたら、花田レイコがそれより先に泣き出した。



「ちょ、大丈夫か!?」

『ごめんね、ごめんなさい谷神くん…!!私、また…また迷惑かけて…っ!』


迷惑掛けられただなんて、思ってないのに。
なあ、お前だって被害者だろう?
好奇の目にさらされて、檻の中にいて。


「いや、大丈夫だから、落ち着いて」

『もう、私、……迷惑掛けることしかできなくて』

「気にすんなって」

『葵ちゃんは、大丈夫?』

「あー…うん、大丈夫」



< 354 / 465 >

この作品をシェア

pagetop