ハコイリムスメ。


葵には親がいるわけでもないし。
家族っていえば俺で、俺も撮られてて。
でもって俺は気にしてなくて。

問題なんか、何もない。



「もう仕事終わったのか?」

『……なんかね、謹慎処分になるらしいの』

「え!?」

バカな、と耳を疑った。

「なんで!」

『イメージが崩れたからじゃないかな…ふふ、みんな自分勝手』



うつろに笑う花田レイコの側に、今誰もいないのだろうか。
支えてくれる人は?



「んな…それじゃあ俺が迷惑掛けて」

『ちがうよ、谷神くん…気にしないで』




電話の向こうで花田レイコが無理に笑っているのが見えるようだった。
でも、俺は笑うことなんてできない。


だって、おかしいじゃないか。
何にも悪いことしてないだろう。

少しでも都合が悪くなったら蓋をして隠すのか?
それが今の社会の仕組みなんだろうか。

だからって、謹慎処分だなんて、ひどすぎる。





『おかしな仕組みは今始まったわけじゃないし…反抗しても仕方ないでしょ?』
「……諦めんなよ」

くだらないとか、どうでもいいとか、こんなもんだよとか。
まだ決めつけちゃだめだ。

それが当たり前の世の中だなんて、狂ってる。



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