ハコイリムスメ。
俺が中2の頃着ていたジーパンと黄色地に黒のかすれ調プリントのTシャツ。
ちょっとデカ過ぎたみたいだった。ジーパンの裾を引きずっている。
「冷めるから、食べて」
座ったまま向かいの席を示すと、また驚いた顔をする。
そして、他に誰もいないのに、不安げに辺りを見回す。
やがてそれが自分に向けられた言葉だと気付くと、余計に驚いていた。
少女はちょこちょこと近寄ってきて、示した席に座った。
それを確認してから、俺がいただきますと言って手を合わせると、彼女もそれにならっておずおずと手を合わせた。
2人揃って何もしゃべらずに、もくもくと食べる。
少女は時折ちらちらとこちらを窺っては、不思議そうに首をかしげる。
……不思議なのは、こっちだっつの。
食べ終わって洗い物も済んだら、11時30分近くだった。
なんとまぁ、中途半端な。
どうしようかと考えているところに、ベランダに置かれた椅子に座って、少女がひまわりを見ているのが見えた。
「ひまわり好きなのか?」
声をかけると、ビクッと肩を揺らして振り向いた。
お、反応した。
ちょっと嬉しかったので、もう一度訊く。
「好き?」
「……ひまわり?」
妙なイントネーションで呟いて、まじまじと黄色の大輪を見つめる。
「ひまわり……ひまわり」
……え?
まただ。
違和感が…
ひまわりなんて、誰でも知ってる花のはずなのに。
―――この子は……
知らないってか?
ひまわりを?
よっぽど気に入ったのか、ニコニコしながら、「ひまわり、ひまわり」と繰り返し呟いて、つん、と茶色の部分をつついた。