ハコイリムスメ。
「え…」
どうしたんだろう、俺は何か嫌なものでもあるのかと道を見た。
特に変わった様子はなく、正面に沈もうとしている夕陽がまぶしいだけだった。
「葵、大丈夫だよなーんにもねえよ」
「行きたくないの…!」
葵は顔を上げようとせず、必死で俺を引っ張った。
その様子に何かあるなと思って、俺はそれ以上追及するのをやめることにした。
「わかったわかった、じゃあ他の道行こう。な?それでいいか?」
俺がなだめるように言うと、葵はようやく顔をあげて力なく微笑んだ。
「ありが……」
ありがとうと言いかけたらしいその時、突然葵がぐらりと揺れて、俺の方に倒れ込んできた。
俺が受け止めなかったら、地面に激突していたに違いない。
「なにやってんだよー葵……」
俺はふざけているのかと思ってそう言った。
だけど、様子がおかしい。
全身ががっくりと力なく、反応がないのだ。