ハコイリムスメ。
俺は疑念を抱いたままにさっちゃんの所を出発して、ショッピングモールの文房具屋についた。
油絵の具に絵筆、それから俺にはよくわからないれれど専門の道具。
たとえば絵の具が早く乾くように混ぜる液体とか。
茶色の紙袋を両手で満足げに抱えながら葵は歩く。
俺が持つと言っても自分で持つと言って聞かないのだ。
むしり取るわけにもいかない。
「葵、重くねーの」
「大丈夫!」
「腹減らない?」
「え?…そう言われれば、空いたー」
「じゃあなんか食おうぜ。えーっと、オムライスは?」
「ちとせくんが作ったやつの方がいい」
「じゃあ…ラーメンは?」
「だって暑いよー」
「なら何が食いたいんだよ」
「えーっと」
葵は俺の問いかけにあたりを見回した。
そしてピシッと指をさした。
「あれ食べたい!」
「クレープってなあ。あれはご飯じゃねーの。お菓子」
「お菓子でもいいよ?」
「…まあいいけどさ……」