ハコイリムスメ。
クレープ屋は夏休みということもあってか大盛況だった。
俺たちは10分くらい列に並んでいる間、あれがおいしそうだの甘いのが食いたいだのとサンプルケースの中の偽物のクレープとにらめっこをしていた。
順番が来る前に、葵はイチゴアイスとバニラアイス、イチゴにイチゴソース、さらには生クリームまで入ったクレープを選び、俺は俺で甘ったるそうなチョコレートのクレープを選んだ。
マンゴーとかメロンとか、プリンとか、中にはキムチなんて変わり種もあったけれど、人間いざとなると無難なところに落ち着くもんだな。
「わーおいしそう!」
「こぼすなよー」
「わかってる、いただきまーす!」
俺たちは店の前に設置された2人掛けの丸テーブル席の空きを見つけて、そこに座った。
画材はテーブルの上に乗せた。
葵がクレープを心底おいしそうに食べるものだから、俺もなんだかこの上なくうまいものを食べている気分になって、楽しかった。
やっぱ食べ物はうまそうに食わなきゃだめだよな。