ハコイリムスメ。
家に着くと、葵は部屋にこもるようになった。
声をかけなかったら飯のことも忘れるだろう集中力で、ただひたすらに絵を描き続けていた。
俺は葵が倒れたりしないように、栄養バランスのいい食事を作って、部屋の掃除をし、テレビを見たり、サトを家に呼んだりして1週間を過ごした。
だけどその間、もちろん何度も何度もあの赤く照らされた家のことを考えた。
毒々しいくらいの赤に色付けされたあの家。
葵の拒絶。
飛んだ記憶。
意味するものはたぶん俺が考えているので正解なんだろうけど、確かめに行く勇気がない。
でもけりをつけなきゃいけない日が近づいているのは確かで。
さっちゃんに言われたんた。
『葵ちゃん、このまま学校に行かないっていうのはまずいでしょう?』
『え?』
『今は夏休みだから、と思ってたけど、そろそろ考えなきゃいけない時期になってる。私は大人として、カウンセラーとして、葵ちゃんをちゃんと保護しなくちゃいけない責任があるのよ』
『だって、今なんの危険もねーだろ?』
『そういうことじゃないのよ。確かにね、ちとせ、葵ちゃんは今あんたの所にいるから精神的にも身体的にも安全よ?だけど、じゃあどうするの?病気をしたら』
『病院行く』
『保険証がないから、全額負担よ?診察券も作れない』