ハコイリムスメ。








‐‐‐‐‐

会場に着くと俺は礼次郎さんとサトに葵のことを頼んで、1人で緑ヶ丘3丁目のあの家に向かった。

向かいながら思った。




最初に会った夜は、言葉すら話せなかった。


自分ひとりじゃ何も分からなくて、ただ闇に脅えていた。




それがいつの間にか、





自分1人で歩いて、自分で考えて、自分で決めて、好きなことをして、笑って、俺の名前を呼ぶんだ。


葵はきっともう、1人で大丈夫。


ようやく、この一瞬が、周りの世界や環境が、葵のものになったんだ。

葵の世界を形作るために、機能するようになったんだ。







それなら、葵。

俺はお前のためにしてやれるあといくつかのことを、お前のためにそして俺のために、精一杯やるよ。
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