ハコイリムスメ。
「葵、ごめんな、ごめんな、俺がまだガキだから、高校生だから……お前は中学卒業するまで、俺と一緒に暮らしてたらいけないらしいんだ」
「ひっく、っく、…私は、これから、どうなっちゃうの……?」
「俺が、必ず、迎えに行くから」
「だって……っ」
不安でいっぱいなんだろう。
当たり前だ。
彼女の世界は、
まだ俺の世界よりもずっとずっとせまいんだから。
足を踏み出すのには、勇気がいる。
そんなこと、わかってる。
「約束するよ、葵。いや、真央って呼ぶべきなのかな」
そんなことはどっちだっていいじゃないか。
「葵」でも、「真央」でも、
俺が大切だと感じるたったひとりの彼女であることに変わりはないんだから。
「夏が終わって秋が来て、冬が来て、春が来る。もう一度夏が来て、秋が来て、冬が終わったら、俺はお前に会いに行くよ。俺、ちゃんと勉強もするし、お前を守れるようになるよ。大人たちの誰にも文句言わせないくらい、立派なやつになるよ」
泣きじゃくる葵に、必死に話しかける。
「卒業と同時に迎えに行くから。それでさ、そうだ、第二ボタンやるよ」
「ボタン…?」
「約束を守ったっていう、記念になるだろ?」
だから、だからどうか葵。
もう少しだけ待っていて。