ハコイリムスメ。
世界は光で満ちている。
世界にはこんなにもたくさんの出会いと奇跡があふれてる。
俺たちが出会ったのが、
運命だなんていうつもりはない。
運命なんて信じない。
俺たちは、お互いが、
お互いを必要だとわかっていたから、
出会えたんだ。
地球上に何人人間がいるとか、
この瞬間に世界がどう変わっているんだとか
そんなこと、俺バカだから知らないけど、
俺たちが出会えたのは、必然だったって、そうだな、思ってるよ。
バイクが最後にブルンと音を立てて止まった。
俺の前にはレンガ造りの建物があった。
正面玄関には花壇。
大きな桜の木がどっしりと植わっていて、その下に彼女は居た。
「──ちとせくん!」
「葵!」
相変わらず綺麗な長い、薄茶の髪だった。
相変わらず細いシルエット。
だけど、顔つきがずいぶん大人になった。
彼女はカバンを放って、俺に飛びついて来た。