ハコイリムスメ。
……なんて、な。
どっちにしろもう関係のないことだ。




 

「お前、よく無事高校生になれたよなあ…」と、よくサトに言われる。
そんなの、受かった俺が一番ビビったって。偏差値50はあるはずなんだけど。俺の学校…



「まあ、そんなこんなで、有名なんですよ。木彫りの熊田に柔道で勝ったってのもヒーロー要素抜群ですよね!」

「なんでそんなこと知ってんだよ!?」


熊田とは、生徒いびりが趣味みたいな、そして熊みたいな体育教師だった。

あだ名は木彫り。

熊みたいな、って言葉でテディベアを連想されると困るから、「木彫りの熊」を連想するようにといつの間にかつけられてた。



俺が体育の成績だけ飛びぬけてるのが気に入らないとかなんとかいうから、だったらせんせーお得意の柔道で勝負しようぜ、俺が負けたら体育も1でいい、わー!!って盛り上がりで、授業中に戦った。


…何してたんだろう、中3の俺。

負けたらどうするつもりだったんだろう、俺。

まあ、とにかく無事に勝った俺は、しばらくの間木彫り熊殺しの谷神と呼ばれるハメになった。

殺してなんかいません。投げただけです。

木彫りは木彫りで、少し態度を改めたようだった。
まあ、遠い昔の話だよ。



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