ハコイリムスメ。
俺の足が必死に走っている間、さっちゃんの仕事について説明しようと思う。
ホントは、座ってアイスコーヒーでも飲みながらゆっくり話したいとこだけど、時間がないのでそうもいかない。
さっちゃんの仕事は、簡単に言えば児童相談所のカウンセラーだ。
この仕事を始めたのは5年前で、なかなか頼りにされているらしい。
俺も頼りにしてるし、ね。
だから彼女のカウンセリングは、普通予約みたいなものが必要なんだ。
無理を言って頼んだわけで、だから遅刻なんて許されない。
前、ちょっと遊びに行こうぜと誘ったとき遅刻したら、『レディを待たせるなんて、どういう神経してんの!!』と怒り、5万円もするブランド財布を買わされた。
それ以来、けっこうなトラウマだ。
何を買わされるか………!!
じいちゃんたちが生きてる時だったっけな。
おかげで数ヶ月間苦労して貯めた貯金がパーになった。
すっからかんってまさしくああいう状態のことを言うんだろう。
…とにかく。
古い話はもういいんだ。
ほら、施設が見えてきた。
ようやく、答えが見つかるかもしれない…
ようやく、涼しいところに入れる!
俺は一心不乱に足を前へ前へと出し続けた。