ハコイリムスメ。

改札口を抜けて歩いていると、後ろから朝独特の喧騒に混じって誰かが駆けてくる音が聞こえた。

誰なのかは振り向かなくても分かってる。


「ちっとせー!」


声に振り向けば、彼女の渡里美佐が、周りの視線ももろともせずに、両手をあげて一直線に突っ走ってくるのが見えた。


「おー美佐、おは」


俺がそう言おうとするのと、サトが半歩下がって避けるのと、美佐が飛びついてくるのとはほとんど全部が同時だった。


「おはよー!」

「のゎ!」


いきなり首にかじり付かれ、バランスを崩した。
サトが支えてくれなかったらコケてた。


「あぶねーだろ!!」


バチンッとデコピンで反撃。


「あだっ!!うふふ、ゴメンゴメン」


謝りながらも美佐は離れず、サトは迷惑そうに俺たちを見た。


「朝っぱらからあつっくるしー…」

「もー!峰島はうるさいなぁ!!」

「ちょ、離れろって」

「やだ~!!あー会いたかった~」

「昨日学校で会っただろ…つか待てよサト!!」


スタスタ歩き去る親友に助けを求めて叫ぶ。


「バカップルの相手すんの疲れる…」

「誰がバカだって!?」

「お前」



< 78 / 465 >

この作品をシェア

pagetop