ハコイリムスメ。
改札口を抜けて歩いていると、後ろから朝独特の喧騒に混じって誰かが駆けてくる音が聞こえた。
誰なのかは振り向かなくても分かってる。
「ちっとせー!」
声に振り向けば、彼女の渡里美佐が、周りの視線ももろともせずに、両手をあげて一直線に突っ走ってくるのが見えた。
「おー美佐、おは」
俺がそう言おうとするのと、サトが半歩下がって避けるのと、美佐が飛びついてくるのとはほとんど全部が同時だった。
「おはよー!」
「のゎ!」
いきなり首にかじり付かれ、バランスを崩した。
サトが支えてくれなかったらコケてた。
「あぶねーだろ!!」
バチンッとデコピンで反撃。
「あだっ!!うふふ、ゴメンゴメン」
謝りながらも美佐は離れず、サトは迷惑そうに俺たちを見た。
「朝っぱらからあつっくるしー…」
「もー!峰島はうるさいなぁ!!」
「ちょ、離れろって」
「やだ~!!あー会いたかった~」
「昨日学校で会っただろ…つか待てよサト!!」
スタスタ歩き去る親友に助けを求めて叫ぶ。
「バカップルの相手すんの疲れる…」
「誰がバカだって!?」
「お前」