ハコイリムスメ。
*
黒板の前で担任の市川一(イチカワカズ、通称イチ)がもうすぐ夏休みだあーだこーだ喋っているのをぼんやりと聞いていたら、いきなり指された。
「あー、ちとせ」
「…」
「谷神ちとせ!!」
「…え、あ、はい?」
ぼんやししてる俺にため息をつきながら、イチは苦笑した。
「何だ、目ぇ開けたまま寝てたのか」
クラスがどっと笑いに包まれた。
「ちとせ、なにやってんだよ~」
「夕べも深夜徘徊か?」
「谷神くんかわいー」
ケラケラ笑う男子。
好き勝手言う女子。
「来週から文化祭委員会始まるから、お前実行委員な」
「はぁ!?え、な、何でだよイチ!!」
イチはニヤリと笑って、
「理由はない!!」
と、満面の笑みで言った。
「横暴教師!!」
「えー女子はー、サト」
「男じゃねぇかよ!!」
イチはボリボリ頭を掻いて、はははと笑った。
「ん?ああそうだったそうだった。まあ良いよなサト」
「まあ…別に」
「そんでお前はちょっとは拒否れ!!」
流れで文化祭委員にさせられてしまった俺…
正直、かわいそうだ。