ハコイリムスメ。
ケーキの箱を片手に、駅から歩いて5分。
「ここ」
そう言うと、マンションを指差して見せた。
「はぁ!?」
サトは俺の家を見上げて、アホみたいに口を開けてポカーンとしている。
「な、ん…え?何コレ」
「何と言われても…」
家ですが。
サトが急に叫ぶように話し始めた。
「だっ…え!?お前アパートつったじゃん!前に!駅から遠いとか、古いとか!!」
「落ち着けよ…おい」
キャラが違うよ、サトルくん。
「めちゃくちゃ近いじゃねえかよ駅!!めちゃハイテクな感じじゃんかよ!」
左手で屋上辺りを指差し、右手で俺の左肩をつかむ。
激しく揺すられて、脳がカラカラ言ってるような錯覚に陥った。
「ちょ、サ、サ、サ、サト…目が回る…ぅっぷ…」
「あ、悪い」
急に放されて、近くの木に思いきり頭を打ち付けた。
ごいんって、嫌な音がした。
「………い…行くぞ…」
家に帰るのにこんなに疲れるのは、葵を連れて、35階まで歩いて上った2週間前以来だ…。あれは本当にしんどかった。