スプリング×ラブ!
「う………わけわかんないよ…」

駅を通りすぎ、桜並木をまだ進む。
いつもの倍、言葉少なになった透夜に緊張しながら、それでも無言は苦しくて、春は言った。

「…………なにが」
「『俺の気持ち考えろよ!』………って、なに」

透夜はピタリと立ち止まって、振り返った。

「……なに?言っていいの?」
「………へ……」
「………あー…………なんでだろうなぁ」
「は?」
「なんかさぁ、騙されてる気がするんだけど」
「はぁ!?」

春が怒ったように顔をあげると、透夜の顔が思ったより近くにあった。彼は何かを考えるように左手を後ろ頭に持っていった。右手はまだ、春の手首をつかんでいる。

「…………うん、」
「な、なに?」

透夜は息を吸い込んだ。

「なんかやっぱスッキリしないんだよね。言うのも悔しいし。てかなに?なんでそんな適当な服着てるわけ?園田さん見習ってほしいね少しは。あーあ、なんでこんな人好きになっちゃったかなぁ俺は。だいたいさぁ、」



「ちょっ、ちょーっと待って!」


春はあわてて透夜の言葉に割って入った。


「はい?なに?」

何事も無かったかのように話をつなげようとする透夜を見つめて、眉を寄せる。



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