スプリング×ラブ!
「ワォ………もう咲いてる…この木だけ…」

感嘆の声をあげる春の隣で、透夜は小さく鼻をすすった。そして、呟く。

「わかんない?この木」
「え?」
「昔は、サクラパレスのとこにいたんだけどさ」
「……………えぇえ!?」
「そ。『サクラ公園』の桜の木」
「な、え!?坂井くん……え!?」
「……どーもお久しぶりですね『ハルちゃん』」

透夜は気まずそうに頭を書いて微笑した。

「嘘ぉー!?冗談だよね!?」
「俺もね、まさかアンタだとは思わなかったんだけどさ」
「谷原くんが!坂井くん小学校入学直前に引っ越してきたって!時期が合わないよ!」
「崇の記憶違いでしょ?幼稚園のときだもん」

(「本気!?」)

「ええ~!こんな……胡散臭い再会……わっ!」

ふて腐れていたら手を引かれて、一瞬後、透夜の腕の中にいた。
初めての感覚に、春は肩を強ばらせた。俯く。

「……胡散臭いとか言わないでくれる?こっちだってだよ。まさかあの子がこんなアホに育ってるとか思わないし」

その言葉にまた顔をあげると、透夜は笑っていた。

「アホー!?」
「事実でしょ」
「なっ…………ん!」



反論を遮るように、彼はその口を塞いだ。





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