スプリング×ラブ!

目が痒い。涙が止まらない。



端から見たら、ただ大泣きしているだけに見えるだろう。でも悲しいわけでも悔しいわけでもないのだ。
透夜の春の涙、そこに一切の感情はない。

目を閉じて目蓋に触れてみる。あまりの痒さのせいで熱を持っているのがよくわかる。
体温の低い自分自身の手のひらが、笑い出したくなるほど心地いいのだ。



「春なんか…大嫌いだ」

もう一度呟くと、クシャミを6回、まるで発作のようにした。

目の前には既にティッシュの小さな山が出来上がっている。
アリにだったらエベレスト、ネズミにだったら富士山………

「やっぱりマスク必要かな………」

それこそ『背に腹は変えられない』しなぁ、と透夜は思うのだった。



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