スプリング×ラブ!
「あー、おいしかった!お母さんごちそうさまー!」
満足満足、そう呟いてからレモンティのペットボトルを手にする。
「春、食べるの速い…」
「え、ごめん!」
春はぼんやりとその『引越しの日』のあと、のことを思い返していた。
小学校を卒業した日、春ははじめて1人で電車に乗って、久しぶりにもと住んでいた町まで行ってみたのだ。その日は確かまだ名前を覚えていた気がする。
電車を降りて、サクラ公園まで道のりを思い出しながら小走りで向かってみると、公園があったはずの場所には大きなマンションが建っていた───。
春は茫然とそのマンションを見上げていた。皮肉なことにそのマンションの正面玄関には、『SAKURAPALESS』と書かれた丈夫そうなしかもかっこいいプレートが付いていた。
『桜の木もないのに、なにが「桜ぱれす」よお!』
小学校6年生の授業でローマ字の読み方を習った春は、SAKURAをちゃんと読めたし、PALESSは無理にぱれすと読めるんじゃないかと思って、それで看板を蹴り飛ばしたい衝動に駆られた。
結局、男の子に逢えなかった。
結局、桜の木さえ見れなかった。
小学校を卒業したての春は、大きなため息をついた。
満足満足、そう呟いてからレモンティのペットボトルを手にする。
「春、食べるの速い…」
「え、ごめん!」
春はぼんやりとその『引越しの日』のあと、のことを思い返していた。
小学校を卒業した日、春ははじめて1人で電車に乗って、久しぶりにもと住んでいた町まで行ってみたのだ。その日は確かまだ名前を覚えていた気がする。
電車を降りて、サクラ公園まで道のりを思い出しながら小走りで向かってみると、公園があったはずの場所には大きなマンションが建っていた───。
春は茫然とそのマンションを見上げていた。皮肉なことにそのマンションの正面玄関には、『SAKURAPALESS』と書かれた丈夫そうなしかもかっこいいプレートが付いていた。
『桜の木もないのに、なにが「桜ぱれす」よお!』
小学校6年生の授業でローマ字の読み方を習った春は、SAKURAをちゃんと読めたし、PALESSは無理にぱれすと読めるんじゃないかと思って、それで看板を蹴り飛ばしたい衝動に駆られた。
結局、男の子に逢えなかった。
結局、桜の木さえ見れなかった。
小学校を卒業したての春は、大きなため息をついた。