スプリング×ラブ!
「はー気持ちいーっ!」
電車を降りて、きれいに整備された歩道を歩く。
両脇に植えられている木は、多分桜の木。もう少ししたら綺麗な薄桃色の花を見せてくれるだろう。
「はーいい天気!春最高!」
小さな声で呟きながらも、『春』という季節に対する喜びが抑えられなくて、彼女は思い切りジャンプした。とたん、制服のスカートが思いきりめくれあがって、慌てて両手でその裾をおさえた。
前後左右を見渡し、誰も歩いていなかったのでほっと胸をなでおろした。
それからしばらく歩いて、見えてきたのはあの高層マンション、『SAKURAPARESS』だった。
数年前とほとんどと言っていいほど変わりなく、それはそこに立っていた。
大好きだった公園、約束の公園、それをつぶして出来たマンションには今、また新しい時間が流れている。
(「ここに住んでいる人たちは、あの大きな桜の木のことをきっと誰も知らないんだなあ」)
そう思うと、なんだか泣きそうになった。