スプリング×ラブ!
やっぱり、と透夜は思った。

(「コイツバカだったもんな。春大好き山口春、能天気。ハタ迷惑」)

「まあいいや…ちょうどよかったね、俺が通りかからなかったらどうするつもりだったのかしらないけど」

透夜はこの時期、一度家に帰ったらほとんど確実に家から出ない。花粉を浴びたくない、という理由だけなのだけれど、親もそれに対して特になにも言わない。
ところが今日に限って、さっき帰ってきた母親に「あら、お醤油切れてるわ!トーヤ、ちょっとスーパー行って買ってきて!」と、半ば強制的に家を追い出されたのだった。

「今から駅前のスーパー行くんだよね。連れてってあげるよ、感謝してよね」
「あ、ありがとう!」

春は小さく万歳をした。
透夜が通らなかったらも何も、迷子になっていたこと自体、ついさっきまで忘れていたのだ。……遊びに夢中で。




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